Pub Antiquarian 『新青年』研究会のブログ

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2月23日、2月例会が専修大学神田神保町校舎で開かれました。


発表は、大森恭子さんの「探偵小説とナンセンス文学:徳川夢声の『オベタイ・ブルブル事件』を一例に」と、島村匠さんの「鏡花の方法――『眉かくしの霊』試論――」でした。


大森恭子さん「探偵小説とナンセンス文学:徳川夢声の『オベタイ・ブルブル事件』を一例に」
徳川夢声の「オベタイ・ブルブル事件」(『新青年昭和2年4月号)を取り上げることで、探偵小説とナンセンス文学の関係を考察しました。当時のナンセンスのあり方を、横溝正史大下宇陀児、保篠龍緒の言葉から考えはじめ、大正末期から昭和初期にかけての新語辞典をひくことで、徳川夢声のナンセンスを対象化し、「オベタイ・ブルブル事件」におけるナンセンスの語りのあり方やその諸相を分析しました。




島村匠さん「鏡花の方法――『眉かくしの霊』試論――」
泉鏡花の「眉かくしの霊」(『苦楽』大正13年5月号)に見られる三つの語りのあり方に注目することで、そこから導かれる聞き手の役割について考察しました。鏡花のエクリチュールの特質の一つである、記述者が語り手であると同時に、聞き手の役割を引き受けることで生じる虚構のあり方が問題であり、それは怪談会すなわち百物語の影響が大きいことを指摘しました。これが「眉かくしの霊」においては、語り手が語っている場へ、読者を、聞き手としてダイレクトに召喚する効果を持っているということになります。こうしたライブ感覚に近い語りのなかに、能のトポスにも似た異空間を「声」の実体化によって現出させているのが、「眉かくしの霊」の話法といえるのではないでしょうか。