Pub Antiquarian 『新青年』研究会のブログ

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2011年5月7日(土)に、5月例会が専修大学神田校舎で開かれました。

発表は、浜田雄介さん「小酒井不木の環境への取り組み」でした。


浜田雄介さん「小酒井不木の環境への取り組み」

小酒井不木の『生命神秘論』(大正4年)における、物質と生命の間に進化の力を見るモチーフを、大正期のいわゆる生命主義や、同時期の江戸川乱歩の『日和』をベースにした社会啓蒙活動などと比較参照しつつ考察しました。

不木の、世界に対する科学を通した関心のありようは、「人工心臓」「疑問の黒枠」などの作品に描かれる議論やその表現にも読み取れますが、それ以上に、大衆作家の集団的な創作活動によって新しい形式を生み出そうという発想や、句会を大切にする姿勢の底に流れています。

この不木の姿勢はやがて、今日的関心の言葉で言えば、生態系への想像力の活性化につながっていくものであり、それは「自伝」に描かれる故郷の自然への細密な観察、また不木碑に記された「いつとんで来たか机に黄の一葉」の自然と生活との関連づけなどに読み取ることができます。